治療の基本は血糖のコントロールです。
そのうえで、眼に対する治療としては、眼局所への注射、レーザー光凝固術、硝子体手術(しょうしたいしゅじゅつ)があります。

眼局所への注射

眼の中またはその周囲にお薬を注射して、新生血管からの血液成分の漏れを抑えたり、炎症によるむくみを抑える治療法です。
完治する病気ではないので、視力を維持するために症状に合わせて治療を継続する必要があります。
通常、入院の必要はありません。

眼局所への注射イラスト

糖尿病黄斑浮腫では、「アンジオポエチン-2(Ang-2[アングツー])」や「血管内皮増殖因子(VEGF[ブイイージーエフ])」という物質が眼の中で増えてきます。
Ang-2は血管の状態を不安定にし、もろくする働きを、VEGFは炎症を起こす、血液や血液成分を漏れやすくする、新生血管をつくるなどの働きをします。もろくなった血管や新生血管から血液や血液成分が漏れ出ることで、むくみを引き起こします()。
このAng-2やVEGFの作用を抑えるお薬を眼の中に直接注射することで、もろくなった血管を安定させたり、新生血管の発生・成長などを抑えたりします()。
また、炎症によるむくみを抑えるためステロイドを眼の中に注射する治療法もあります。

治療イメージ

レーザー光凝固術

むくみの位置が黄斑の中心部から外れている場合にのみ行うことが可能です。
黄斑の中心部に及ぶ、むくみの原因となる血管異常をレーザーで治療することで、さらなる視力低下を防ぎます。
なお、糖尿病網膜症に対しては新生血管や虚血網膜にレーザーを照射し、新生血管の発生を抑えたり、すでに発生した血管を小さくしたりします。

レーザー光凝固術のイラスト
  • 黄斑の中央にあるくぼみは「中心窩」とよばれ、ものが最もよく見えるところです。
    この部分に異常が起こると、著しい視力低下につながります。

硝子体手術

出血や症状の原因物質を取り除いたり、網膜が引っ張られている場所を切ったりする治療法です。
黄斑に薄い膜がはっている場合や網膜が前方に引っ張られている場合に行われます。
眼の内部を満たす硝子体のうち、網膜に接続する部分を手術で切除することで、硝子体内出血やむくみの原因となる物質を取り除きます。

硝子体手術のイラスト

【参考】血糖コントロールについて

糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫、その他の合併症をくい止めるためには、血糖コントロールを行うことが基本です。糖尿病と診断されたらできるだけ早く血糖値の目標を定め、治療を開始しましょう。コントロール指標ではHbA1c値が重視されます。

血糖コントロール目標

血糖コントロール目標の図

治療目標は年齢、罹病期間、臓器障害、低血糖の危険性、サポート体制などを考慮して個別に設定する。

  • 適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合の目標とする。
  • 合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とする。対応する血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満をおおよその目安とする。
  • 低血糖などの副作用、その他の理由で治療の強化が難しい場合の目標とする。
  • いずれも成人に対しての目標値であり、また妊娠例は除くものとする。

日本糖尿病学会 編・著: 糖尿病治療ガイド2020-2021, 33, 文光堂, 2020

コントロール目標は年齢、罹患(りかん)している期間、サポート体制などを考慮して、患者さんごとに個別に設定します。医師とよく相談しましょう。

血糖コントロールを達成するためには、次のような生活習慣の改善が重要です。

生活習慣改善(運動・食事・禁煙)のイラスト

佐藤裕保. 糖尿病の食事. e-ヘルスネット.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-02-004.html
厚生労働省(2021).(2022年4月閲覧)

監修 杏林大学医学部眼科学 教授 井上 真 先生(2022年5月作成)